岩木山麓、嶽(だけ)地区の夏の名物として絶大な人気を誇るブランドとうもろこし「嶽(だけ)きみ」。
夜明け前から農家さんたちが収穫した朝採れの嶽きみは、まさに格別の美味しさです。岩木山麓の嶽地区は朝と晩の寒暖差が大きいことで、非常に甘みの強いとうもろこしに育ちます。
「きみ」は津軽の言葉で「とうもろこし」、嶽地区でのみ収穫されるので「嶽きみ」という名がついています。現在は地域ブランドとして全国的な知名度を誇り、メディアにも頻繁に登場しています。
夏にだけできる「嶽きみロード」
毎年お盆の前後から1か月程度、県道3号線沿いを中心に通称『嶽きみロード』と呼ばれ、約20軒以上の露店や販売店が軒を連ねます。
店舗では生の嶽きみの購入や、全国への発送の受付の他、ゆでた嶽きみをその場で買って食べることもできます。嶽きみのプロがゆでた直売所のきみをその場で食べるのも、また大きな楽しみです。

県道沿いに出店する露店

嶽温泉の店舗の様子
農地開拓までの道のり
現在は嶽きみの一大産地となった岩木山麓の嶽地区ですが、元々は農業に向かない不利な条件の土地で、ここに至るまでには様々な道のりがありました。
明治の時代には乳牛の牧場として開拓されたり、その後大正時代には実業家の藤田謙一により農場が開発されました。(この藤田農場は後に現在の東奥義塾へ寄贈され、東奥義塾の財政基盤の助けとなりました。)

藤田農場トラクターと岩木山(大正後期 絵ハガキ 青森県所蔵県史編さん資料)
戦後の嶽きみへの挑戦
その後、嶽きみへの挑戦が始まったのは戦後のことで、常盤野地区の瑞穂集落という場所からスタートしました。昭和24年、樺太から引き揚げで移り住んだ人々が開拓を始めましたが、最初は何を作付してもうまくいかず試行錯誤の連続だったといいます。
その後、昭和36年にとうもろこしの栽培を始め、次第に栽培面積が拡大していきました。同時期に酪農も行われており有機肥料が確保できたことも、豊かな甘味のあるとうもろこしとして育った理由の一つでした。
昭和40~50年代から「嶽きみ」として知られるようになり、その後も農協の嶽きみ部会設立や、産地一丸となった嶽きみブランドのPRが実を結び、多くの苦労を経て嶽地区の一大名物に成長しました。毎年盆の時期になると、嶽きみを求めて多くの人々が嶽地区、岩木山を訪れます。
嶽きみの産地、夏の岩木山へ!
是非、夏にしか味わえない岩木山の魅力を味わいにお越しください。
県道沿いの道路のほか、嶽温泉にも嶽きみを購入できる店舗が複数並んでいます。(岩木屋、田沢旅館、藤喜商店、など)
弘前駅方面から来る場合は、嶽温泉や岩木スカイラインを目指して県道3号線を進んで来ると、道中に露店が並んでいます。
汗をかいたら、嶽温泉や湯段温泉でさっぱりしていくのもおすすめです。

田沢旅館の浴場
また農産物直売所の野市里(のいちご)では、嶽きみそのものはもちろん、嶽きみを使ったスイーツや加工品も扱っています。嶽きみソフトクリームは年間を通じて人気の一品です!

直売所 野市里(のいちご)
この他、嶽きみを購入できる店舗の一部は以下に紹介しています。(Google Mapなどから確認できる常設店舗の一部であり、全てでは無いので参考にご覧ください)
岩木山の夏、嶽きみを是非ご賞味ください!お待ちしております。
参考書籍・資料
- 新編 弘前市史 岩木地区 通史編 (弘前市)
- いわき読本(岩木山観光協会)
- 青森県史デジタルアーカイブシステム